
ペルナンブコ連邦大学機械工学部は工学部としてブラジルで唯一日本語講座を持っていたが、大学の運営方針変更に伴い、19年に閉講してしまった。同学部で教授を務める篠原アルマンド秀樹さん(2世、60歳)と、講座開講時から尽力し、授業も行ってきた大野文子さん(49、神奈川県出身)が18日に編集部を訪れ、講座再開に向けての動きを語った。
篠原教授はサンパウロ州バウルー出身で、母が1世、父が2世。幼少時から日本語学校に通った。研究者を目指し、カンピーナスサンパウロ州立大学で修士号、1994年から東北大学大学院に留学して材料工学で博士号を取得。「日本留学では心から良い経験をさせてもらった。そのチャンスを若い学生にも与えたいと思い、日本語の学習と日本留学を薦めていた」と日本語講座を開設した動機を説明した。
日本移民百周年で全伯が盛り上がっていた2008年、篠原教授がコーディネーターとなって工学部が予算を組み、日本語講座が開講された。
通常は文学部などに設置される日本語講座だが、日本語が堪能な篠原教授がいることから工学部での開講となった。
翌年に国際協力機構(JICA)から大野文子さんが講師としてボランティア派遣され、事前アンケートや、教科内容の選定、講座設計を担当した。
講座は、2年間で日本語検定試験N4レベル合格を目指す内容となっており、2010年からは大学の授業単位として認められた。その流れから同連邦大学は2013年に東京大学や横浜国大などと学術交流の大学間協定を結ぶなど、関係を深めてきた。
講座受講生は1600人以上で、中にはN2レベルの学生や日本の国費留学で東大などで勉強した学生もおり、講座水準は折り紙付きだという。16年以降はブラジルの景気後退の影響を受けた大学が運営方針を変更し、講座規模を縮小させて19年にいったん閉講した。18年以降、大野さんは日伯間を行き来しながら日本語の授業をしているという。
篠原教授は「なんとかもう一度、講座を再開させたい」と強調し、大野さんも「今は遠隔授業もできる時代になった。何とか道を探りたい」と期待を募らせる。大野さんは現在東京在住で、ビジネスマン向けに日本語授業をしている。今回は10日間の滞在予定で27日に帰国するという。