日本の若者、ブラジルで何を得た?=ブラジル日本交流協会生体験談=(1)=尾曾菜穂子さん

 ブラジルの非営利団体「ブラジル日本交流協会」(神戸保会長)は、ブラジル文化を学びたいという日本の青少年に対し、1年間の実地研修プログラムを実施している。2022年は5人の日本の若者が当地で研修を行い、様々なものを得て研修を終えたという。今連載では研修生寄稿の体験談から、今の日本の若者がブラジルに何を求め、ブラジル文化と交わることで何を得たのかを確かめる。(編集部)

 経歴 尾曾菜穂子(茨城県出身、23歳)。2022年に立教大学異文化コミュニケーション学部を卒業し、研修制度に参加。研修先はピラール・ド・スール日本語学校。趣味は写真を撮ることと詩や文章を書くこと。

 なぜブラジルに行こうと思ったか。それはかつてブラジルへ行った時に感じた居心地の良さが忘れられなかったからだ。
 研修中は自分がもっと生きやすくなる哲学を見つけるため、ブラジル人の表現や考え方を観察した。特に印象に残った見習いたい3点をご紹介する。

尾曾菜穂子さん

①自分のことも相手のことも高く評価し、応援してくれる

 ブラジル人は、私の拙いポルトガル語をたくさん褒めてくれた。少しでも話せたら、親指を立て、笑いながらこう言ってくれる。
 「Parabéns!(おめでとう!)」
 何がおめでとうなのか。私がポルトガル語で話そうとしていること自体を祝福してくれているのだ。
 日本語学校で生徒たちは体育の時間に様々なスポーツを体験する。楽しそうに身体を動かしてはいるものの、上手くできなくて失敗の繰り返しだ。そんな時に耳にするのが「Quase!(惜しい!)」だ。
 自分自身に「惜しい!」と言うことに、最初は違和感を覚えたが、失敗を「あとちょっとだったのに!」と前向きにとらえると、ポジティブな気持ちが生まれる。コップに半分入っている水を見て「半分しかない」と思うか「半分もある」と思うかという話によく似ていると思った。

②属性で人を判断しない

 ブラジル人は他人を「Judge(批判する)」しないように思える。「あの人は母親になったのにミニスカートを履いている」とか、「長男なのにしっかりしていない」とか、「〇〇なのに〇〇」というような文句はほとんど聞かなかった。
 カーニバルの時期、お腹の出ている人も上半身裸だったり、ハゲを全く気にしていなかったり、高齢でも奇抜な格好をしている人をたくさん見た。そんな、堂々と自分の人生を楽しんでいる人々を、私は美しいと思った。

③よく笑っていて、ご機嫌?

 南米の人は明るい、というイメージがあるだろう。確かに、よく冗談を言って笑うし、鼻歌を歌っている姿もよく目にした。陽気な彼らに私も何度笑わされたことだろう。
 しかし、悲しく辛いことも日々起こる。危ない目にあった人や、うつ病で亡くなった人の話も聞いた。彼らは感情を無にして、無理に明るく振る舞おうとしているわけではない。悲しむ時は悲しみ、そして前に進もうとするのだ。ブラジル人は「Resistente」であると思った。「精神力が強い」「辛抱強い」という意味だ。
 以上が私が見習いたいブラジル人の良さだ。私は若いうちにたくさんの人に会って、その人の素敵なところをどんどん吸収して、より良い人になりたいと思っている。ブラジルには生き方の手本となる人との出会いがたくさんあった。
 日本の反対側にあるブラジルは、たくさんのことが日本とは異なる。人も植物も空も食事も、全てが大きい!そんなところに暮らしていると、なんだか自分の心も少しおおらかになって余裕が生まれる気がする。
 人って分かるようで分からない。物乞いする人にお金を渡す人とそうでない人、選挙でルーラに投票した人とボルソナロに投票した人。どちらが正しいか私には分からないが、みんなそれぞれに理由があるらしい。人生ってそんなもんだとも思う。白黒はっきりつけられる場面は少なくて、大半がグレーゾーンだ。
 私の夢はジャーナリストになることだ。まだはっきりとした進路は決まっていないが、もうあと一年かそれ以上、どこか外国に住んでみたい。日本、オーストリア(高校時代に留学)、ブラジル、+〇〇の視点を持って物事を見ることができるようになりたい。
 私は大きな声で愛を叫びたい。「ブラジルに行ってよかった!ありがとう!」と。
 今の社会や、自分の置かれている状況にモヤモヤしている人へ。住む場所を変えるだけで、耳にする情報や周囲からの影響は大きく変わりますよ。Why not Brazil !?

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