前法相がクーデター画策?=自宅から選挙結果覆す法案発見=事件直前の渡米も不審点に

トレス氏(Valter Camargo/Agencia Brasil)
トレス氏(Valter Camargo/Agencia Brasil)

 8日のボルソナロ前大統領派による連邦議会・最高裁・大統領府襲撃との関連で逮捕状が出ているアンデルソン・トレス前連邦直轄区保安局長ならびにボルソナロ政権元法相の自宅から、大統領選でのルーラ氏当選を無効にする条令を提案する書類が見つかった。これで、トレス氏自らにクーデターの意思があった疑惑がさらに強まった。12、13日付現地紙、サイトが報じている。
 この書類は、アレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事が10日にトレス氏への逮捕命を出した際、並行して行われた家宅捜査で押収されたものだ。トレス氏は7日から米国に滞在中で、家宅捜査だけが強行された。問題の書類はトレス氏の書斎から見つかったもので、コンピューターで作成された3頁ほどの文書だという。
 連警によると、その内容は、選挙高裁所長官でもあるモラエス判事が選挙投票前、投票日、投票後に出した判断を違法行為とみなすことでルーラ氏の当選を無効にするというもので、10月30日の決選投票後のいずれかの日に作成されたと見られている。
 このような条令は前例がないが、ブラジル政治選挙権アカデミーのコーディネーター、レナト・リベイロ・デ・アルメイダ氏は、「明らかなクーデターだ。憲法にそのようなものは存在しない。仮に発令していたら、トレス氏かボルソナロ氏かのどちらかが逮捕されていただろう」と語っている。
 トレス氏は12日、ツイッターでこの件に関する釈明を行った。それによると、自身は選挙結果を尊重しており、クーデターを起こすことはありえないと主張。この書類は「一般の人から手渡されたもの」で、「破棄するためにあえて保管していた」「不幸にも誤解された形で文書が見つかってしまった」のだという。
 だが、この声明直後にフラヴィオ・ジノ法相が記者会見を行い、「このような提案書を自分に送って来る人がいたら、その人物は現行犯逮捕される」と語り、トレス氏の言動を不可解なものとした。
 トレス氏の行動は、問題の書類が発見される前から怪しまれていた。同氏は12月31日に法相の任期を終了すると、2日後の2日に連邦直轄区保安局長に就任。だが、就任してわずか4日の6日夜に渡米。三権の中枢施設襲撃事件は、同氏が不在だった8日に起きている。
 これに関してもトレス氏側は、「以前から休暇で米国に行くことになっていた」と主張しているが、イバネイス・ロシャ連邦直轄区知事は、「自分に無断で急に渡米した」と反論している。連邦直轄区官報でも、トレス氏の休暇は「9日以降」と記されていた。
 また、一部の報道では、トレス氏は襲撃前日の7日に、フロリダでボルソナロ大統領との面会を果たしていたとも報じられている。
 11日には最高裁大法廷が判事投票9対2で、トレス氏への逮捕命令とイバネイス知事の90日間の停職命令の維持を決定。今回の不審文書発見騒動は、イバネイス知事が連警での事情聴取を受けるなど、テロ行為への関与が疑われる人物への厳しい対処が続く最中に起きている。

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