連載小説=自分史「たんぽぽ」=黒木 慧=第107話

・九月十八日 宮崎県議会議長の米良さんが宮崎県人会も〈新会館を建設せよ、母県も大いに協力する〉との発言に県人会役員は本気でその準備に入る。
・九月三十日 血液と尿の検査、美佐子は異状なし。私はコレステロール二二七で少し高め。
・十月三日 市長選挙でサンロッケ市はエファネウ・ゴヂーニョ、バルゼン・グランデはロッケ・ゴイス。
・十月八日 高橋コチア青年会長訪日、来年の五十周年祭への招待のため。
・十月十一日 吉加江県人会長夫妻訪日 五十五周年祭の答礼。
・十月十三日 大平正前コチア青年事務局長死亡、肺炎による(七十八才)。
・十月十六日 三ヶ月ぶりに雨らしき雨が降った。
・十月二十九日 慧の七十才の誕生日。とうとう七十才と言う節目にさしかかった。古希である。昔は七十才まで長生きするのは希だったことから来た名前であった。でも今の日本には一〇〇才以上の老人が三万人もいるそうだ。時代も変わったものである。私自身体力の劣えは少しづつ、いや、ある程度肯定はするけど、特にこの頃は眼の見え方が大分悪くなってきたし、耳の聴こえも悪くなってきた。しかし、内臓障害は余り感じないし、気分的にはまだまだ一〇〇才まで生きるつもりで頑張っている。
 今日はやさしいみづえちゃんにプレゼントしてもらった。ボーロ(ケーキ)でバルゼン・グランデのカラオケ仲間に祝ってもらった。皆さんありがとう!
・十一月十一日 半年位前から野菜の苗作り、販売をやってきたのだが失敗。今からは普通の露地栽培に切りかえた。ブロッコリー、キャベツ、セロリーなど。
・十一月十九日 イビウーナで手話演劇(日本最初のレコード歌手 佐藤小夜子物語)。
・十一月二十三日 コチア青年の森の第一回植樹(二十六種類二五〇本を植えた)。
 コチア青年の森は来年渡伯移住五十周年を記念して造成するもので、その委員長に私が選ばれ、それを助ける委員に白旗信、山田充伸の両氏が選ばれた。コチア青年の森は何もない整地された畑地に植えるのではなく、国士舘のすでにあるチグエーラ(疎林)の中の樹の陰に原生種の樹木の苗を植えて、二十年から五十年で昔の原生林の森を再生しようという試みである。私達コチア青年は何も植えていない所に森を作りたかったのだけれど、国士舘運営担当の小川あきを氏が、樹の陰に植えた方が成績が良いテストケースがあると主張して、私達は仕方なく納得してそれに従った次第である。

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