《記者コラム》セレソン好調の背景に=チッチ戦術の影響

チッチ監督(Lucas Figueiredo/CBF)

 サッカーW杯がグループ予選の大詰めを迎え、ブラジルも大いに盛り上がっている。ぶらじる代表(セレソン)の予選2試合を見るに、今大会のセレソンの立ち上がりは、コラム子がサンパウロ市に移住してから経験した2010年以降大会のモノの中では、間違いなくベストだ。
 その根拠はなにか。初戦のセルビア戦で衝撃のオーバーヘッド・キックを決め、ブラジルサッカーファンを熱狂させたリシャルリソンをはじめとする若手の豊富な攻撃陣はもちろん重要な要因だ。だが、コラム子がより評価しているのは、鉄壁の守備力だ。
 大会2試合の時点で、相手に得点を許さなかったチームは32チーム中、ブラジルとモロッコの2チームだけ。それだけでも十分に立派だが、セレソンがさらにすごいのは、得点どころか、対戦相手にゴール枠内へのシュートを一本も打たせていないことだ。得点を決められそうになってヒヤッとした瞬間さえなかったのだ。
 つまりこれは、ディフェンダー陣が相手攻撃陣をペナルティ・エリア内に容易に立ち入らせなかった、いや、それ以前に中盤が相手攻撃陣のパスを巧みに断ち切ってゴールまで届かないようにしていたことを意味する。センターバックのチアゴ・シウヴァ、ボランチのカゼミロは共に国際的評価の高い守りのエキスパートだが、彼らが相手に思うようなサッカーをさせていないのが大きい。
 こうした選手たちの活躍もさることながら、コラム子はその背後にチッチ監督の影響力の大きさを見る。今大会のセレソンの勝ち方は、2012年、チッチ監督率いるコリンチャンスがクラブ南米一、さらに世界一になったときの勝ち方に非常によく似ているのだ。
 今回のセレソンはセルビア戦を2―0。スイス戦を1―0と、大量得点型の試合ではなく、全く危なげない展開で勝利している。2012年リベルタドーレス杯でのコリンチャンスは、1―0や2―1の試合がほとんどで、守備に全く隙がなく、結果、1敗もすることなく優勝を果たした。
 とりわけ準決勝サントス戦での、当時飛ぶ鳥落とす勢いだったネイマールの封じ込め方は見事なものだった。相手に攻撃をさせず、必要な点だけ入れて勝つ。今のセレソンの戦い方は、あのときのチッチ戦術そのものだ。
 この抜け目ない、堅実なサッカーが最後まで続けば、セレソン優勝も決して夢ではないだろう。(陽)

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