ガル・コスタが急死=ブラジル音楽界を半世紀牽引

ガル・コスタ(公式ツイッター)
ガル・コスタ(公式ツイッター)

 国際的評価の高い音楽運動「トロピカリズモ」の一員として注目され、ブラジルを代表する女性歌手のガル・コスタが9日、サンパウロ市で死去した。77歳だった。手術のため、音楽活動休止を発表した矢先だった。9日付現地サイトが報じている。
 1945年にバイア州サルバドールで生まれたガルは、14歳のときにボサノバを聴いたことで音楽を志すようになった。18歳のときに共通の友人を通じてカエターノ・ヴェローゾと知り合い、1967年、カエターノとの共演盤「ドミンゴ」を発表。同作は今日までボサノバの名盤として知られている。
 翌1968年、ガルはカエターノやジルベルト・ジル、ナラ・レオン、ロックバンドのムタンチスらと共にアルバム「トロピカリア」を発表。ビートルズをはじめとしたロックや世界各地で起こった反戦運動や学生運動に刺激された文化運動「トロピカリズモ」の象徴的作品である本作は、軍事政権下のブラジルの若者の気持ちを代弁した。
 ガルが1969年に発表したトロピカリズモの影響の強いアルバム「ガル」も今日まで高い評価を受けている。
 70年代以降はより洗練されたサウンドと清涼感溢れる歌声で国内屈指の人気女性歌手となり、名作の誉れ高い1971年のライブ盤「ファ・タル」や、「フォルサ・エストラーニャ」(1979年)「フェスタ・デ・インテリオール」(1981年)「シューヴァ・デ・プラッタ」(1984年)などの大ヒットを飛ばした。
 近年では2011年に発表したアルバム「レカント」が大胆なエレクトロ・サウンドで絶賛され、若いリスナー層にもアピールしていた。
 今年も、当初はサンパウロ市で5、6日に開催された音楽フェスティバル「プリマヴェーラ・サウンド」で「ファ・タル」完全再現を行うとして、目玉出演者のひとりとなっていた。だが、鼻の内部にできた結節除去の手術のため他の公演と共にキャンセルし、治療に専念していた。この手術と死因との関係はまだ明らかにされていない。

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