大統領選、ルーラが返り咲き=「民主主義の勝利」と宣言=ボルソナロは沈黙

勝利のあいさつでのルーラ氏(Rovena Rosa/Agencia Brasil)
勝利のあいさつでのルーラ氏(Rovena Rosa/Agencia Brasil)

 10月30日、大統領選の決選投票が行われ、ルーラ氏(労働者党・PT)が現職のボルソナロ氏(自由党・PL)を破って当選。来年1月に13年ぶりに大統領に返り咲くこととなった。かねてから大統領選に不信感を抱き続けていたことから落選時の対応が注目されていたボルソナロ氏は同日夜から、無言を保っている。10月30、31日付現地紙、サイトが報じている。
 開票率1%の時点ではボルソナロ氏が56%とリードしていた。だが、それは同氏の支持が強い中西部の票から開票が進んだためでもあり、時が経つにつれ、ルーラ氏が徐々に差を詰めていった。
 開票率約67%付近にさしかかった18時44分、ルーラ氏がボルソナロ氏を逆転。その後もルーラ氏の強い北東部中心に開票が続き、差が広がっていった。
 開票率が98・91%まで進んだ19時56分、選挙高裁はルーラ氏の当選を宣言した。最終的にはルーラ氏が50・9%を獲得。得票数はブラジル大統領選で史上初の6千万票台となる6034万5999票。敗れたボルソナロ氏も2018年の大統領選時の5779万7847票を上回る5820万6354票を獲得したが、及ばなかった。
 ボルソナロ氏は43%台に終わった一次投票から追い上げをはかり、5%ポイント以上あったルーラ氏との差を1・8%ポイントまで縮めた。だが、サンパウロ市をルーラ氏に53%で奪われたこともあり、2018年選挙では68%を獲得した聖州の得票率が55%にとどまったことや、逆転を狙いたかったミナス・ジェライス州で49・8%にとどまったこと、さらにかねてからルーラ氏が圧倒的に強かった北東部で3割前後の支持しか得られなかったことが響き、逆転には至らなかった。
 ボルソナロ氏敗北の原因として、これら地域対策の不足に加え、23日のロベルト・ジェフェルソン氏、29日のカルラ・ザンベリ氏といった、熱心な支持者として知られた政治家が相次いで銃で騒動を起こしたことも響いたとする声も少なくない。
 ボルソナロ氏の落選後、トラック運転手の支持者らがサンタカタリーナ州をはじめとする11州と連邦直轄区で、国道を塞ぐ抗議行動を行った。だが、ボルソナロ氏自身は落選後、側近とも顔を合わせず沈黙状態となり、ネットで影響力を持つ息子たちや側近も黙ったままだ。選挙前に懸念されていたような騒動は起きなかった。
 一方、当選したルーラ氏はサンパウロ市パウリスタ大通りで勝利宣言を行い、「民主主義が専制主義やファシズムに勝った」「自分に投票をしなかった人を含め、国を治めていきたい」と語った。ルーラ氏は2002、06年に続く3度目の大統領当選。ラヴァ・ジャット作戦での服役で参加できなかった18年選挙の結果をひっくり返しての当選だった。
 なお、ルーラ氏は民政復帰後、最も僅差で当選した。また、棄権率、白票、無効票はみな、一次投票を下回った。

◆関連コラム

 10月30日の大統領選でのルーラ氏当選に対し、世界各国の大統領、首相たちが一斉にルーラ氏を祝福し、次期大統領としての承認を行った。その顔ぶれは米国のバイデン大統領やフランスのマクロン大統領、中国の習近平主席、現在紛争中のロシアのプーチン大統領やウクライナのゼレンスキー大統領ら多数。かねてから個人的にも親しかったアルゼンチンのフェルナンデス大統領は31日に早速、ルーラ氏を訪問した。また、アルトゥール・リラ下院議長、ロドリゴ・パシェコ上院議長、ローザ・ウェベル最高裁長官らも承認を宣言しており、国内外で民主主義的に認められた結果となった。
    ◎
 落選後、沈黙を続けているボルソナロ大統領。今後の対応をどうするのかが気になるところだが、最初に浮上した報道が、大統領が「ミシェレ夫人とのSNSでの相互フォローをやめた」というものだったことも注目を集めている。落選は夫婦仲にも陰を落とすものだったのか。大統領をネット上で煽る立場の次男カルロス氏ら、息子たちも沈黙しているが、ボルソナロ一家の動向に今後注目だ。

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