矛盾続出でファリア通信相の訴え却下=大統領CM不正消去疑惑=選挙高裁職員の内応も発覚

選挙高裁(公式)
選挙高裁(公式)

 【既報関連】ファビオ・ファリア通信相が25、26日に訴えた、「ラジオでボルソナロ大統領の選挙CMの放送回数が少ない」という異議申し立てに対し、選挙高裁内の職員がボルソナロ氏側の訴えに有利な計らいをしようとしたことや、「ボルソナロ氏のCMを放送していない」と訴えられた局がボルソナロ氏側からCMを受け取っていないことが発覚。ファリア通信相の訴えは却下され、ボルソナロ氏の立場はさらに苦しくなった。 26、27日付現地紙、サイトが報じている。
 ファリア通信相は25日、「全国規模でのボルソナロ氏の選挙CMがルーラ氏より15万4千回も少ない」と訴えた。これに対しアレッシャンドレ・デ・モラエス長官は「証拠不十分」として「証拠を添えて再提出」を命じた。26日午前、選挙高裁職員のアレッシャンドレ・ゴメス・マシャド氏が連邦警察に対し、「放送回数不公正の不正に関わり、懲戒免職となった」との申告を行い、同件が報道されるとボルソナロ支持者らは「不正は存在した」とまくしたてた。ラシエル・マルチンス上議(ポデモス党)らはモラエス長官罷免を叫び、ボルソナロ大統領も30日の決戦投票を延期するよう求めた。
 だが、マシャド氏が連警に提出した文書やファリア通信相が再提出した書類にはいくつかの矛盾点があった。マシャド氏が「ボルソナロ氏のCMを100回分少なく送った」とされるラジオ局「JMオンライン」の社主リジア・プラッタ・シアボッティ氏は、SNSにボルソナロ大統領やミシェレ夫人と共に写った写真を掲載するほどの熱心な大統領支持者であることや、ファリア通信相に「ボルソナロ氏のCMを放送しなかった局」と名指しされたJM局(ミナス・ジェライス州)やヴィヴァ・ヴォス局(バイア州)から、「(大統領所属の)自由党(PL)からの選挙CMがそもそも送られて来ていない」との事実が指摘されたのだ。その中には、ボルソナロ派で福音系のビスパ局も含まれていた。
 こうした矛盾が相次いだ後、モラエス長官は26日夕方、マシャド氏を懲戒免職にした理由を「政治的な動機も含む頻繁なモラルハラスメント」であるとし、同氏がボルソナロ氏側の訴えに有利な計らいを選挙高裁内で行っていたとの判断を示した。さらに、マシャド氏が連警に行った報告も虚偽で犯罪的なものとした。
 同長官は、ボルソナロ氏側の不正捜査の要求も却下。逆に、ボルソナロ氏側の行為は政治的策略が疑われるとして、捜査を行うように命じている。
 モラエス長官による懲戒処分と捜査命令の後、ボルソナロ氏はアンデルソン・トーレス法相や三軍の司令官らを集め、大統領官邸で会議を行い、何か重大な決定が行われるのではと国内に緊張が走った。だが、そこでは大統領が30日の決選投票を延期させたいとの意向が語られたが、賛同は得られず、会議はそこで幕引きとなった。
 ここ数日、相次いで世論調査結果が発表されているが、決選投票まで1週間を切った時点でルーラ氏有利の状況は変わっていない。ロベルト・ジェフェルソン氏の連警襲撃事件の余波でむしろボルソナロ大統領の支持が落ちたという調査結果もある。今回の不正疑惑への異議申し立てが、大統領への支持率悪化に繋がると懸念されている。

 

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