選挙高裁=大統領選候補誹謗に削除命令=汚職疑惑や人肉食問題など=世論調査機関の捜査は禁止

選挙高裁(Jose Cruz/Agencia Brasil)

 選挙高裁は13日、大統領選で決選投票に臨むボルソナロ氏(自由党・PL)、ルーラ氏(労働者党・PT)に対し、誹謗・中傷の拡散で問題視されている、両氏に近い筋のサイト記事や動画を削除するよう命じた。また同裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス長官は、世論調査機関を捜査しようとする連邦警察などの訴えを却下した。13、14日付現地紙、サイトが報じている。

 サイト記事に関する決定はTSEで13日に行われた全体審理を受けたものだ。この結果、対象となった記事や動画は決定から24時間以内に削除されることになり、従わない場合は1日につき1万レアルの罰金を科されることになる。
 対象となった主なものは、ボルソナロ派のサイト「ブラジル・パラレロ」、ユーチューブ上でのルーラ氏批判を目的としたチャンネルの「ルーラフリックス」、ボルソナロ大統領が下議時代の2016年にニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで「人肉食に興味がある」と語った動画などだ。
 これらは完全な作り話でなかったため、判事の間でも意見は割れた。報告官のパウロ・デ・タルソ・サンセヴェリーノ判事の「表現の自由」の観点からの削除反対の主張には、セルジオ・バーニョ、カルロス・ホルバック両判事の支持もついた。
 だが、ベネジト・ゴンサウヴェス判事と最高裁の3判事(リカルド・レヴァンドウスキー、カルメン・ルシア両判事とモラエス長官)が削除に賛成し、4対3となった。
 レヴァンドウスキー判事の見解によると、ボルソナロ派の主張するルーラ氏の汚職疑惑は裁判所で審理中のものがなくなっており無効の上、間違った情報などが加えられていると判断した。
 また、モラエス長官は今回の対象となった誹謗に関し、「既存の大手メディアによる世に知られた記事を使ってはいるものの、結論付けの時点で意図が捻じ曲げられ、結果として虚偽となっている」との分析を行った。
 他方、ルーラ陣営がキャンペーンにも使用していたボルソナロ氏の人肉食に関する発言に関しても、「先住民問題に対するインタビューで、それそのものが発言の本意ではないのに、そこだけが抜き出され、拡散されている」とし、満場一致で撤去が決まった。
 これらの判事投票に加え、モラエス長官はこの日、連邦警察や経済防衛行政審議会(Cade)が進めようとしていたダッタフォーリャなどの世論調査機関に対する捜査を差し止める命令も下した。
 モラエス長官は「捜査を行うための具体的な罪状が存在しない」との見解を示した。
 ボルソナロ氏の関係者は「世論調査機関が恣意的な判断を行い、世論を操作しようとした」として、同氏が大統領選で不利になった理由にしようと試みている。大統領も14日にモラエス判事の判断を強く批判している。
 ただ、これに関しては、9月7日の独立記念日以降、大統領の攻撃対象がこれまでの選挙の投票システムから世論調査に変わった経緯もあり、「調査機関に対する圧力」との見方もある。

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 ルーラ陣営が14日の選挙放送で、元フラメンゴのゴールキーパーのブルーノ、元俳優のギリェルメ・デ・パドゥアがボルソナロ大統領支持者であるとの内容を放送した。前者は2010年に交際中の恋人を、後者は1992年にドラマで共演していた女優を殺害し、共に有罪で実刑判決にも服した人物。2人とも有名な犯罪者だけに内容が微妙だが、選挙高裁はこれをどう判断するか。

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