世論調査は本当に大間違いだったのか

大統領選一次投票の結果、「世論調査は信用ならない」との声が、ボルソナロ大統領支持者を中心にあがっている。彼らの主張の大枠は「ダッタフォーリャをはじめとする各世論調査は、ルーラ氏圧倒的有利の情報を流すことによって、世論を操作し、恣意的にルーラ氏を当選させようとした」というものだ。こうした見方は連邦政府や連邦議会の大統領派の間にも広がっており、「世論調査機関を捜査せよ」との動きに発展しつつある。
今回の世論調査について、コラム子はそこまで大外れだったとは思っていない。たしかにボルソナロ氏に関しての予想は当たっていなかった。しかし、それ以外の候補者に関しての予想はそれほど外れていない。
一次投票有利とされたルーラ氏に対する予測は、「50〜51%得票で勝利」というもの。世論調査はそもそも「3%ポイントの誤差がある」ものなので、ルーラ氏に関しては外していない。
ボルソナロ氏の得票率約43%は世論調査より6〜7%ほど多かったが、実はこれも4位のシロ・ゴメス氏の票が7%から3%、シモーネ・テベテ氏の票5%から4%に落ちていることから説明可能だ。ルーラ陣営は選挙前、「票が無駄になるからルーラ氏に投票して一次で勝たせろ」と呼びかけ、反感を買った。その反感票がボルソナロ氏に回ったとすれば、調査結果との差も理解できる。
州別に見ても、予測差が目立ったのは、聖州だけで、他はそれほど事前予想と変わらない。聖州には全600市以上あり、どの世論調査機関も調査員を十全に配備するのは難しかったということだろう。
「知事選はたくさん外れたではないか」という意見もあるが、これは有権者にとって、知事選は大統領選の二の次で投票前日や当日になって決める人が多いことに起因する現象だ。投票直前に急激に支持者を増やし、圧勝した候補の例は多くある。上議、下議、州議に関しては「誰に入れたか覚えていない」という人が多いレベルなので、予測差も推して知るべしだろう。
ボルソナロ氏は選挙前、投票システムとその結果に対して強い不信感を表明していた。しかし、世論調査を非難する大統領支持者らは「投票結果は信頼できるもの」という前提に立って論陣を張っている。世論調査への非難が続けば続くほど、投票システムへの信用が不動のものとなっていくとすれば、ボルソナロ氏にとっては、なんとも皮肉な展開だ。(陽)