《ブラジル》最高裁が看護師最賃法差し止め継続=資金源を確保せぬ法の限界=求められる解雇や病床閉鎖回避策

最高裁(José Cruz/Agência Brasil/Arquivo)

 【既報関連】最高裁のルイス・バローゾ判事が4日に出した、看護師の最低給与を定めた法令差し止めの司法判断に関する全体審理は15日の時点で過半数の賛同を得て、差し止め継続が決まったと15、16日現地紙、サイトが報じた。
 看護師達の最低給与(最賃)法は8月に裁可され、看護師の最賃は4750レアル、看護技師は3325レアル、看護助手と助産婦は2375レアルと定められた。
 ところが、法令適用開始直前にバローゾ判事が司法判断を出し、オンラインの全体審理の結果、大半が司法判断を支持して差し止め継続となった。これは看護師達の最賃引き上げに反対するものではなく、引き上げ前に各種の問題を解決する必要があると最高裁が認めた事を意味する。
 今回の司法判断は、新法に従えば財政破綻が起き、看護師達の解雇や病床閉鎖が必要となるとの医療機関や地方自治体からの訴えを受けたもので、60日以内に新基準適用に伴う財政上のインパクトとそれに伴う解雇や病床閉鎖に関する資料を提出する事も命じられた。労組間社会経済調査・統計所によると、対象となる医療従事者260万人中、給与額が新基準以下の看護師は50%、看護技師は85%、看護助手や助産婦は52%いる。
 バローゾ判事の命令を受け、全国市町村連合は12日、経費増は105億レで、外部からの支援か新財源がないと、14万3300人いる看護師達の内、3万2500人を解雇せねばならず、3500万人への医療サービスが止まると報じた。
 非営利団体のサンタカーザと5大医療団体が8月に行った調査では、新法適用で8万3千人の解雇と2万病床の閉鎖が必要とされていた。影響が最も深刻なのは統一医療保健システム(SUS)での診察や検査などの半数以上に対応している慈善病院で、SUS対応分の払い戻し額と実費との差拡大に最賃引き上げが重なれば財政は破綻する。
 調査に応じた医療機関は、人件費は全体経費の60~64%を占めており、経費が増えれば、病床や医療従事者、投資などを削減する必要があると答えている。
 看護師達はスト計画(一部は実行)中で、ボルソナロ大統領も最高裁の判断を批判したが、連邦議会は対応策を話し合う意向だ。

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