《ブラジル》最高裁が看護師最賃法を差し止め=病院経営困難にとの声受け=大反発、スト入りも検討

バローゾ判事(Fernando Frazao/Agencia Brasil)

 最高裁のルイス・ロベルト・バローゾ判事が4日、看護師の最低給与を定めた法令を差し止める司法判断を下し、議会や看護師達の反発を招いたと4~6日付現地紙、サイトが報じた。
 同判事が差し止めた法令は、連邦議会が7月に承認し、ボルソナロ大統領が8月4日に裁可、翌日に連邦官報に掲載されたものだ。
 コロナ禍の中、命がけの激務をこなす看護師達の働きに見合う給与をとの声は2020年から出ており、同年提出の法案に手を加え、看護師の最低給与を4750レアル(看護技師は70%、看護助手と助産婦は50%)に制定した。だが、年次調整の項目には大統領拒否権が行使された。
 同法令は看護師達も歓迎したが、260万人の看護師やそれに準ずる医療従事者の8割以上の給与は新水準以下だったため、病院などが経営上の問題に直面する事になった。
 法令の対象は公私双方の医療機関で働く看護師らで、医療機関は法案審議中からこの額の給与を払えば経営が成り立たなくなるとの声を上げていた。裁可後は、看護師の解雇や病床閉鎖が必要と、より具体的に窮状を訴え始めていた。
 今回の司法判断は全国保健・病院・施設・サービス連合(CNSaude)からの合憲性を問う訴えを受けたもので、バローゾ判事も看護師達の働きの重要性を認めた上で、法令の適用前に法令による否定的な影響を考慮すべきと指摘。今月からの給与引き上げを差し止め、60日以内に新基準適用に伴う財政上のインパクトとそれに伴う解雇や病床閉鎖に関する資料の提出を命じた。資料提出義務は、連邦自治体や市、経済省、労働省、全国医療従事者連合(CNTS)などにも及ぶ。
 看護師達はスト入りを検討中だが、同法令は看護師給与の引き上げを定めただけで、医療機関への公的資金・公的支援の調整は扱っていないため、実勢以下の調整や調整凍結で資金確保に窮していた統一医療保健システム(SUS)対応機関を中心に財政上の窮状悪化が懸念されていた。
 バローゾ判事は6日にロドリゴ・パシェッコ上院議長と会合を持ち、9日の最高裁大法廷(オンライン)で同件を審理する意向だ。

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