アルゼンチンは今=在住者レポート=在アルゼンチン日本語教育連合会=「中級学習指導講座」を開催=2年半ぶり対面再開に喜び=8

「第14回中級学習者指導講座」での山崎紀子先生と参加者らの様子。山崎先生は国際交流基金JFスタンダードツリーの基本概念を「日本語技能や社会文化知識を用い、日本語の花を咲かせましょう」と説明している

 在アルゼンチン日本語教育連合会(教連、島津アレハンドロ会長)傘下のアルゼンチン日本語教育センター(山本カリナ所長)は8月14~15日、2022年度「第14回中級学習者指導講座」を開催した。独立行政法人国際協力機構(JICA)後援、独立行政法人国際交流基金サンパウロ日本文化センター協賛。

 講座初日の14日は、サンパウロから初来亜した山崎紀子先生が、初・上級指導と中級指導の違い、中級コース全体の学習項目の設定や授業方法についてを講義だけでなく、グループ同士の意見交換を通じて指導した。
 講座2日目の15日は、コリエンテス日本語学校の平井雅代先生が中級の文法について指導した。
 講座参加者は、日アルゼンチン学院、ブルサコ日本語学園、サンタ・フェ日本語学校、コリエンテス日本語学校などの教連加盟校と、ブエノスアイレス市立外国語大学レングアスビバス、大学語学センターCUIの教師ら約10人。教連加盟校から参加の場合は宿泊費と交通費の50%を主催者が負担した。
 コロナ禍により、対面形式の研修会は中断され、今回は2年半ぶりの再開となった。参加した日本語教師らは思わず抱き合って再会を喜んだ。
 会場となった教連施設は、JICAアルゼンチン支所の2021年度コロナ特別対策支援移住者団体助成事業により、3月半ばにホール、会議室、トイレ、テラス等の修繕工事を完了したばかり。開会式で挨拶に立った武田浩幸JICAアルゼンチン支所長は、教連の歴史を振り返り、教連の建物自体に歴史的な価値があること、今後の日本語教育振興普及に寄与する研修プログラムの紹介をした。
 教連は1916年に創立した在アルゼンチン日本人会をその起源とする。同会は27年にブエノスアイレス日本人会附属日本語教習所(後の日アルゼンチン学院)となり、40年に教育連盟、60年に日本語教育連盟となった。
 島津アレハンドロ教連会長は、現在のアルゼンチンの日本語教育界の現状について、非日系学習者の増加に伴い、学習者総数は増加傾向にあるが、教師数は減少していると説明。講座に参加し、自己研鑽に励む日本語教師らに賞賛を送った。また、日本語学習者は何を求めているのか、オンラインではなく学校で授業を受ける意義、日本語教師が担う生徒らに日本文化を伝え、日系子弟に日本のアイデンティティを伝える役割について語り、JICAと国際交流基金に謝辞を述べた。

 昼食には完璧な和食弁当が振舞われ、参加者一同は舌鼓を打ちながら日本人度を向上させた。参加者らは昼食をきっかけに、日本食材の調達方法や代替調理法、現地米の日本的炊き方など情報交換を行い、立体的な人間関係を構築していた。

昼休みの和食弁当。ここまで完璧なものはアルゼンチンではなかなか食べることはできない

 講義中、山崎先生は学習者同士が教え合うピア・ティーチング(多方向性自律学習)の重要性を「グループ活動により新たな気づきやアイデアが生まれ、意識が活性化します」と参加者らに伝えていた。2年半ぶりに対面研修が再開できたことで、参加者らはピア・ティーチングを講義からだけでなく、昼食時の情報交換などから体験することができた。
 リニューアルした新たな環境でアルゼンチンの日本語教育の発展に期待したい。

追伸 綺麗になった教練施設の講堂。100年以上の歴史的建造物なので仕方がないのだろうが、風通しがよすぎる。暖房をしてもその甲斐がない。そこは私が1991年から94年にJICA海外開発青年として配属され活動していたころと変わらない。(2022年8月15日 ブエノスアイレス 相川知子)

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