福田雄基さん=野球道具約500点を寄付=日伯両国で希望の種をまく

インダイアツーバでグローブを手渡す福田さん
インダイアツーバでグローブを手渡す福田さん

 福田雄基さん(31歳、千葉県出身)が6月21~28日に来伯し、サンジョゼ・ドス・カンポス、インダイアツーバ、ジガンテス、アニャングエーラ、グァララペスの野球チームを巡り、野球道具約500点を寄贈した。
 今回寄付した道具はボール400玉、グローブ40個、バット10本、キャッチャー防具3セット、エルボーガード2つ、新品バッティンググローブ20双、新品バットグリップテープ20個。寄付品は日本中から集めた子供の頃に使っていたが今では使っていないものや、社会人野球で毎年買い替えられているほぼ新品の物だ。
 福田さんは、日本文化の「もったいない」に対してあまり肯定的ではないという。「日本ではシューズとかに擦り傷とかできたらすぐに買い替えちゃうんです。野球道具もまだ使える状態なのに買い替えられちゃうことが多いんです」と語る。
 福田さんはまだ十分使える道具を入手出来ない人たちのもとへ持っていく活動を行っている。しかし、ただかき集めたものをそのまま運んでいるわけでなく、「子供達にできるだけいい状態で持ってこれるように、後輩と一緒に一つずつグローブをオイルで手入れしました。本当に心をこめた道具です」と手でゴシゴシする動作を満面の笑顔で見せ、それぞれの道具への思いやりを語った。
 福田さんは多額の費用を自己負担していたため、活動を一度中止しようと考えたこともあるという。しかし、グァララペスのとある子供の父から送られた言葉がその気持ちを変えた。
 その父は、以前は道具がないという理由で子供たちが野球ができず、仲間外れにされ、劣等感を抱き、イジメに至るまでのケースが多いことを明かし、福田さんの寄贈品で野球ができるようになり、仲間はずれやイジメが無くなったと話した。
 さらに、パンデミック中の困難も話し、子供たちには野球をしたい情熱があったが、道具が無ければ続いていなかったと語り、「雄基さんじゃなかったら今の野球、どうなってたかわからない。グローブがあるから、キャッチボールができる。キャッチボールができるから、友達ができる。感謝しかない」と謝辞を述べたという。

「関わらさせてくれてありがとう」

 初めて行った寄付活動のクラウドファンディング(寄付公募)目標金額は40万円だったが、集まったのは6万円。しかし、4回目には20~30万円集まり、今回の6年目ではついに40万円超が集まった。
 資金寄付をした人からは「家族や仕事でブラジルまで行きたくても行けない。だから代わりに応援したい」との声や、まだ経済的にも余裕の無い後輩達からも「活動に関わらさせてくれてありがとう」など支援や感謝の言葉をもらうという。
 寄付をした人への報告やリターンなどを考えると、支援してもらい嬉しい反面「こんな感じで大丈夫かな」と気を使っていたことを話し、周りからの言葉に励まさせられたと話す。
 さらに福田さんはお金をあまり持っていなくても関わる人が増えてきたと話し、気づいたらいろいろな人が活動内容を広め、勝手に道具を集めて福田さんに届けてくれる人たちまでいると話す。
 福田さんは「一人で寄付活動を負担して、一人だけで実行に移して完結していたら社会活動としての意味がないんだなと思いました。こうやっていろいろなひとを巻き込んで、彼ら一人一人に種を植えるような感じで、みんなも違うような形で何かに取り組んでくれればより豊かになると思う」とこれまでもらった数々の言葉から感想を述べた。

苦境に立ち、変わる福田雄基=子供たちに夢を託す

 福田さんはプロ野球選手を目指す野球一筋の人生を送っていたが、怪我によりその夢を断念。再起して日本体育大学を卒業後、起業に挑戦し、成功するも、詐欺にあい全資産をほぼ失った。失意の中訪れたコロナ禍を好機と捉え直し、再起を図り、事業を軌道に乗せた。
 福田さんは繰り返し「騙されてよかった、あのおかげで人生の価値観を変えることができた」と語る。詐欺以前はお金使いが荒く、無駄ばかりだったと回想する。詐欺にあったのが不幸中の幸いにもコロナ禍前であり、態勢を整える猶予もあったと話し、今ではお金の使い方と人付き合いが大きく変わったと明かした。
 福田さんはこれまで「プロ野球選手になれなかった福田雄基」というコンプレックスを心中に抱えていたと話す。だが今は「ブラジルに支援を行う福田雄基」が胸の内にいると力強く語った。
 そんな福田さんは道具を子供たちに手渡す際にいつも2つの「お願い」をするという。1つ目は「グローブは持っていない友達を呼んで、彼らと一緒に使ってね」。2つ目は「何歳までやるかわからないけど、プロになったらたくさんご飯おごってね」。子供たちに自分の夢を託していた。
 福田さんはこれから「野球で繋がる世界の輪」をテーマに活動を続ける。「お互いに言葉が出来なくてもキャッチボールをすれば伝わるんです。逆に喋らないからこそ思いが伝わると感じます」と話した。

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