激しく、ユーモラスなブラジル流政治批判

ボルソナロ大統領の風刺ミームの例(twitter)
ボルソナロ大統領の風刺ミームの例(twitter)

 安倍晋三元首相殺害事件は当初、「政治テロ」と見る向きが強かった。安倍氏支持者の間では、普段から安倍氏を批判している勢力(通称:アベガー)が起こした事件ではないかとの憶測が流れ、大手メディア上でそうした発言を行った有名コメンテーターもいた。
 だが実際は、山上徹也容疑者の統一教会に対する恨みが原因であり、安倍氏殺害は統一教会との関係に対する憤りから起こされたものだった。
 この件に限らず、安倍氏支持者と「アベガー」の対立はネット上のあちこちで目にする。安倍氏支持者は「アベガー」の批判的言動を「狂気じみている」と評すが、コラム子に言わせてもらうと、「アベガー」なる人たちの言動は政治批判としては物足りないものがある。
 物足りなさを覚える原因は、コラム子が普段、ブラジル人の厳しい政治批判を日常的に見ているからだ。ブラジルでは、言葉だけでなく、風刺漫画、最近ではミーム(冗談画像)を使った批判活動が多い。そしてこれらの皮肉がとにかくきついのだ。
 ブラジル人の行いに比べれば、「アベガー」諸氏の批判は大半が論理的なもので、相手をやり込めるようなどぎつさがない。「狂気じみている」には程遠く、むしろかなり大人しいくらいだ。
 昨今、ブラジルでとりわけ厳しい批判の対象になっているのはボルソナロ大統領だ。「ボルソナロが銃とコロナでブラジルを死に追いやる」との批判文句は最早普通で、下議時代の審議中に居眠りをしている写真に「無能」との注釈を入れられたり、同性愛者嫌悪者の同氏を女装させた合成写真を作成、囚人服を着せて監獄に入れたもの、同氏の口から下水を吐かせたものなどもある。日本であれば即削除されそうなミーム画像が日々作成され、頻繁にネット上を賑わしている。
 ボルソナロ氏支持者への批判も容赦ない。大統領の過激な発言を何でも容認するような支持者は「ガド(家畜)」、アニメキャラクターにちなんで「ボルソミニオン」と呼ばれる。風刺漫画としてロボット改造手術で脳みそに汚物を移植され、ボルソナロ氏の言うことをひたすら真似する支持者の様子を描いたものまである。
 ただ、こうした批判活動は、前任のテメル氏も、その前のジウマ氏、ルーラ氏も受けてきた。リオのカーニバルのパレード上で大批判されるようなことも珍しくないのがブラジルだ。
 比べてみると日本の政治批判にはユーモアが足りない。そして民主主義の世の中において「政権批判をするな」という声が上がる日本の今の状況は健全でないような気がしている。(陽)

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