《ブラジル》ラ米最大の国営銀行頭取がセクハラで辞任=「尻を触った」「シャワーを浴びて来い。君の将来について話すから」女性職員のセクハラ告発受け=大統領の女性票獲得に痛手

ギマリャンエス氏(Valter Campanato/Agencia Brasil)

 連邦貯蓄銀行(CAIXA)のペドロ・ギマリャンエス頭取が6月29日、セクシャル・ハラスメント騒動の責任を取って辞任した。同行はラ米最大の国営銀行で、連邦政府の社会保障・福祉政策の莫大な支払い業務などを担っている。同銀行の女性職員たちによるメディアを通した告発、抗議活動や社会からの反発で追い込まれた形となった。ギマリャンエス氏はボルソナロ大統領と懇意なことで知られていた。6月29、30日付現地紙、サイトが報じている。
 ギマリャンエス氏のセクハラ疑惑は6月28日にサイト「メトロポレス」が報じた後、被害者がテレビ出演して被害を訴えたことで一気に広がった。CAIXAの前では女性職員らによる、ギマリャンエス氏に対する激しい抗議活動も行われた。
 騒動は被害者が仮名で行った録音証言で悪化した。アナなる人物は、ギマリャンエス氏が常に、女性たちの主人のように振る舞い、「ベルトや首に触ってくることは日常茶飯事だった」と語った。
 ヴァレリアという職員は、「出張を、気に入った女性を帯同させる機会に利用していた」と語り、実際に帯同経験のある女性たちは、「サウナやプールに行かないかと誘われた」「行かないと答えると尻を触ってきた」「『ホテルの自室にシャワーを浴びてから来い。君のこれからの将来について話すから』と言われた」など、次々と証言を行っている。
 また、直接的に性交渉を持ちかけることもしばしばで、卑猥な言葉で話しかけ、体を触りながら迫ることもあったという。
 ギマリャンエス氏は2019年1月のボルソナロ政権成立とともにCAIXA頭取に就任しており、最初のセクハラ被害は就任早々から報告されていた。
 これらの報道を受け、6月29日、ギマリャンエス氏は頭取辞任を発表したが、声明ではセクハラ疑惑を否定した。CNNの報道によると、辞任前夜にはボルソナロ大統領のもとにも赴き、疑惑を否定したという。
 だが、連邦検察庁は事態を重く見ており、ギマリャンエス氏への捜査準備を進めている。検察庁にはすでに8通の捜査要請が届けられている。
 この辞任劇はボルソナロ大統領にとっては手痛いものとなった。第一は、ギマリャンエス氏がボルソナロ政権の経済部門を支える存在であったことだ。パンデミックにおける緊急支援金やFGTSの引き出しなどの政策は、ギマリャンエス氏の下で行われている。
 ただ、両者の関係はそれだけではなく、公私ともに親しい間柄として知られていた。大統領は同氏を「ペドロン」の愛称で可愛がっており、ギマリャンエス氏もボルソナロ氏の副候補にとの希望まで持っていたと報じられている。
 ギマリャンエス氏の辞任に関し、大統領の側近たちは、「これで大統領選でのボルソナロ氏への票が減ることはないと思うが、票が増えにくくなることはたしかだ」との見解を示している。
 ボルソナロ氏にとっては、6月22日に逮捕されたミウトン・リベイロ前教育相に続く、関係の近い政府要人の騒動となった。
 ボルソナロ大統領はギマリャンエス氏の辞任を受け、ダニエレ・マルケス氏を後任に指名した。同氏は経済学者で、経済省で生産性促進局の局長を務めていたが、女性問題で失脚したあとの人事だけに、女性の登用となったようだ。

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