《記者コラム》レアル・マドリッドCL制覇=ヴィニら新世代に集まる期待

ヴィニシウス(左)とロドリゴ(facebook)
ヴィニシウス(左)とロドリゴ(facebook)

 サッカーの欧州チャンピオンズ・リーグでレアル・マドリッドが優勝した。これは伯国サッカー界にとっても極めて重要な意味を持つ。
 決勝戦の対リバプール戦で決勝ゴールを決めたのは、伯国フラメンゴが生んだ21歳ヴィニシウス・ジュニオル(通称:ヴィニ)。今季スペイン・リーグでチームのエース、ベンゼマにつぐ17得点をあげ、レアルにとって不可欠な存在となった。リーグでの活躍で世界中のサッカーファンの熱視線が一身に集まる中、ヴィニは決勝ゴールを見事に決めたのだ。
 さらにレアルで台頭しているのはヴィニだけではない。右ウイングのレギュラーを掴みかけている、同じく21歳のロドリゴも同様だ。サントス出身のロドリゴは準々決勝のチェルシー戦、準決勝のマンチェスター・シティ戦でともに途中出場から、チームにとって起死回生の同点ゴールを決めた。特に準決勝では試合終了間際ピッチに入り、5分ほどのアディショナル・タイムで2点を決めるという奇跡的な活躍を見せ、一躍チームの救世主となった。
 このヴィニ、ロドリゴの成長は、レアルの戦略の正しさを証明したものだった。同チームは2018年、スーパースター、クリスチアーノ・ロナウドを移籍で失った。世界一の選手の穴を埋めるためにどのような補強をするかが注目されたが、レアルはベルギー代表のエース、アザールを獲得した以外は大きな補強に動かなかった。
 逆にヴィニ、ロドリゴという伯国で「天才少年」と呼ばれた2人には、それぞれ10代選手への契約金としては当時の記録となる程の額を支払い、育成に力を入れる姿勢を示したのだ。
 当初、成長までにもう少し時間がかかるかと思われていたが、頼みのアザールが絶不調に陥ったことで20歳になる前からヴィニにチャンスが回ってきた。
 ヴィニは、老舗チームの屋台骨を若手選手に任せることに懐疑的なファンから厳しい批判を受けることも多くあったが、「僕はフラメンゴで厳しいファンの前に晒されてきたから緊張などしない」と豪語。その精神力の強さで能力を覚醒させ、今期の大ブレイクを果たした。それに牽引されるようにロドリゴも成長の途上にある。
 名門レアルを復活させた2人の影響は、伯国サッカーファンのセレソン(代表)への評価にも及んだ。2014年のW杯以前からセレソンは10年以上もネイマール依存症を皮肉られていた。だが、今回のレアル優勝で、辛口の伯国サッカーファンの口からようやく「6度目のW杯制覇」を前向きに信じる声が聞こえるようになってきた。ヴィニとロドリゴの年齢から考えて、向こう3回分のW杯は期待が持てそうだ。(陽)

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