《ブラジル》警察暴力で黒人精神障害者を窒息死=英国紙「第2のジョージ・フロイド」=国際的な人権問題に発展

事件発生時の写真(Twitter)

 セルジッペ州で起きた、黒人のジェニヴァウド・デ・ジェズス・サントスさん(38)が連邦道路警察(PRF)のパトカーのトランク内で窒息死させられた事件は、「第二のジョージ・フロイド事件」として国際的にも強い波紋を投げかけた。前日はリオ市で23人殺害事件が生じたばかりで、ブラジルの警察による暴力や倫理性が問われている。5月25〜30日現地紙、サイトが報じている。
 事件の発端は5月25日午後、セルジッペ州ウムバウーバの国道101号線での職務質問だった。ジェニヴァウドさんはヘルメットなしでバイクを運転しており、PRFの警察官3人に囲まれた。
 ジェニヴァウドさんは命令通り、シャツや両手を上げて身体検査を受けたが、ポケットにあった薬のことを訊かれたりして警官の手を振り払った。そのため、抵抗したとみなされ、3人がかりで取り押さえられた。警官は背中を膝で押さえつけた後も蹴飛ばすなど、半時間近く暴行を続けた。
 最後は手足を縛られてパトカーのトランクに押し込まれた上、催涙ガスを大量に流し込まれた。暴行やガスを流し込む様子は近隣住民が録画しており、パトカーから煙のようにガスが噴出す様子も報じられた。ジェニヴァウドさんは警察に連行後、病院にも運ばれたが、すでに死亡していた。
 目撃者の中にはジェニヴァウドさんの甥のバリソンさんも含まれていた。バリソンさんは「おじは精神に障害があり、常に薬と処方箋を携行している」などと説明し、本人を落ち着かせて話をするよう求めたが、警官たちは耳を貸さなかった。
 同件は国内でまず、強い物議を醸した。それは前日の24日にリオ市ヴィラ・クルゼイロで軍警特殊作戦実行部隊(BOPE)がPRFなどと共同で行った緊急作戦で、麻薬密売者たちを粛清した疑いが報じられていたためだ。同日は、流れ弾を受けて亡くなった近隣住民1人を含む23人が亡くなっている。
 他方、ジェニヴァウドさんの件は英国ガーディアン紙が「第二のジョージ・フロイド事件」と呼ぶなど、国際的にも大々的に報じられた。ジョージ・フロイド事件は米国ミネソタ州で起き、職務質問を行った白人警官が黒人男性のフロイドさんを地面に倒した上、首を足で押さえつけて窒息死させた。事件後は全米規模でブラック・ライブス・マター(BLM)と題される抗議運動が起きたが、ジェニヴァウドさんの件はフロイドさんの事件からちょうど2年後の同じ日に起きている。
 事件後はPRFの行為が問題視され、抗議活動も起きた。現政権は犯罪組織摘発などへのPRFの参加を認めたが、以来、ヴィラ・クルゼイロでの粛清関与も含め、暴力犯罪が多数報じられている。
 G1サイトなどによると、PRFの研修カリキュラムからは基本的人権の授業が除外されており、倫理観に関する疑惑と問題を深めている。グローボ局の報道番組「ファンタスチコ」は29日、ジェニヴァウドさん殺害に関与した警官はクレベル・ナシメント・フレイタス、パウロ・ロドルフォ・リマ・ナシメント、ウイリアム・デ・バロス・ノイアの3人だったと報じた。

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