《ブラジル》大統領選でボルソナロが追い上げ=モロ辞退とポピュリズム政策で=第3の候補擁立は失敗か

ルーラ元大統領(Ricardo Stuckert/Presidência da República, via Wikimedia Commons)、ボルソナロ大統領(Isac Nóbrega/PR, via Wikimedia Commons)

 28日付エスタード紙などの報道によると、大統領選支持率の最新調査では、ルーラ氏(労働者党・PT)が41%、ボルソナロ氏(自由党・PL)が35%で、大統領が追い上げていることが分かった。
 3位のシロ・ゴメス氏(民主労働党・PDT)は7%と伸び悩んでいる。続く4位はジョアン・ドリア氏(民主社会党・PSDB)の3%、5位のアンドレ・ジャノネス氏(アヴァンチ)が2%となっている。3位だったモロ氏が脱落したことや、アウシリオ・ブラジルの最低月額400レアルへの引き上げなどを受け、ボルソナロ氏が着実に1位との差を縮めている。
 この調査は、モダル銀行の依頼によりファトゥーラ・インテリジェンシア社が行ったものだ。20~25日に2千人に電話して聞き取り、25日に公表された。
 6位のシモネ・テビチ氏(民主運動、MDB)は0・9%、以下はすべて1%以下だ。当地の政治ジャーナリストの中には「モロが降り、ウニオン・ブラジルなどの連合も候補を決めあぐねている。第3の候補はもう失敗に終わった」と語る人も出始めており、4年前同様に2極化する可能性が高まっている。
 ポデールダッタの調査でも、ルーラ氏41%、ボルソナロ氏36%とほぼ同じ数字になった。
 20日付BBCブラジルは、ルーラ氏の支持率は昨年から約44%を維持している一方、ボルソナロ氏は今年年初に30%だったのが35%まで上げている理由に関して、《約8%の支持率を保っていたモロ氏が辞退したことで、ボルソナロ氏が最も恩恵を受けた》とし、3月末にモロ氏が出馬辞退をしたことが大きく影響したと報じた。
 モロ氏の支持者の多くはもともとボルソナロ派であり、それが元のさやに戻った結果、現職大統領に利する形となったと見ている。
 その結果、《決選投票でもルーラが勝つシナリオは変わらないが、かつては15~17ポイントだった差が、5~10ポイント差まで縮まっている》《ボルソナロが勝つ可能性は20%から25%に上がっている》との専門家の分析を伝えた。
 北東伯を中心とする貧困層による大統領支持を増やしているのは、昨年末に始まったアウシリオ・ブラジルの最低月額が今年に入り、400レアルに大増額されたことだと言われる。この最低月額は今年一杯で終わるはずだったが、27日、下院が最低月額を400レアルで維持するための暫定令(MP)修正を承認した。ボルソナロ氏と手を組んだセントロンが強力に推し進めている。
 この修正を上院でも承認すれば、大統領が当初から希望していた最低400レアルの支出が保証されることになる。選挙に向けて、インフレ高進や政策金利急上昇による景気悪化を補うためのポピュリズム政策と指摘する声もある。
 また、その拠出元が明確に示されていないことから、来年以降に国家財政を圧迫することが予想されており、公務員大幅昇給と合わせて「財政爆弾(bomba fiscal)」などと呼ばれている。

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