《ブラジル》アドリアーノ氏殺害巡る謎の真相は?=「連邦政府が処刑人事」=姉妹の録音記録が公に

 ボルソナロ大統領一家とも親交のあったリオ市のミリシア(民兵)で、2020年2月にバイア州の農園で警官に射殺されたアドリアーノ・ダ・ノブレーガ氏の姉妹の一人が、同氏の死後2日目に叔母と交わした電話で「連邦政府がアドリアーノの処刑を条件に役職人事を行っている」と語っていた肉声記録が公開され、強い波紋を投げかけている。6、7日付伯字紙、サイトが報じている。
 元軍警で、リオ市西部の民兵組織「エスクリトーリオ・ド・クリーメ」を率いる大物としても知られたアドリアーノ氏は、ボルソナロ一家と交友があった。長男フラヴィオ上議はリオ州議だった2005年にアドリアーノ氏を表彰しているし、自身のラシャジーニャ(ピンハネ)疑惑の際、アドリアーノ氏の妻と母親を幽霊職員として雇っていたことが指摘されている。
 ラシャジーニャ疑惑が浮上した頃、アドリアーノ氏は民兵組織内で殺害命令を出していた容疑で逮捕状が出され、長きにわたる逃走状態にあった。そして2020年2月9日、バイア州エスプラナーダの農園でリオ州とバイア州の軍警の合同捜査隊によって射殺された。この当時から、異例の大掛かりの捜査が行われたことや、「なぜ逮捕でなく、射殺に至ったのか」の疑問が強く残っていた。
 フォーリャ紙は6日に、アドリアーノ氏の姉妹のダニエラ・マガリャンエス・ダ・ノブレガ氏が2020年2月11日に叔母と交わした会話の録音を公表した。これはアドリアーノ氏殺害に関して行われた捜査でリオ市警が入手していたが、物的な証拠がない証言だけであることもあり、報告書には記載されていなかった。
 ダニエラ氏はこの録音の中で「アドリアーノはもうすでに、連邦政府が彼を処刑することと引き換えに役職人事まで行っていたのを知っていたのよ。連邦政府内にはアドリアーノという名の会議まであったんだから」と語っていた。
 アドリアーノ氏が「自分が殺される」と知人に漏らしていた例はこれだけではない。同ミリシアの弁護士だったパウロ・エミリオ・カッタ・プレッタ氏には、殺される数日前にアドリアーノ氏本人から最後の連絡が入り、「自分は証拠隠滅のために殺される」と語っていたと、殺害直後に報じられていた。
 なお、今回の報道では、リオ市警はアドリアーノ氏の別の姉妹のタチアナ氏が「殺害命令を下したのはリオ州知事(当時)のウィルソン・ヴィッツェル氏だ」と語っていた録音も入手していたことを指摘。
 これを裏付けるように、フラヴィオ氏のラシャジーニャ疑惑の主犯として逮捕経験があるファブリシオ・ケイロス氏が6日、「アドリアーノが言及していたのはヴィッツェルのことだ」と言及している。ボルソナロ氏の長年の友人であるケイロス氏とアドリアーノ氏は軍警時代からの仲間で、どちらも家族がフラヴィオ氏のリオ州議時代の幽霊職員を務めていたとの疑惑も持たれている。
 この録音は6日から7日にかけてのネット上の話題を独占。野党側の政治家たちはこれを問題視し、真相解明を求め始めている。

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