《ブラジル》中立にこだわり孤立するボルソナロ=プーチン寄り発言目立つ=ウクライナ大統領を「コメディアン」扱い

休暇中のボルソナロ大統領(Twitter)

 ボルソナロ大統領は2月27日、ロシアのウクライナ侵攻に関して、ブラジルは「中立」の立場をとる意向を明らかにした。大統領の口からはロシアの大統領寄りの発言も見受けられるが、この問題に関しては、連邦政府内部やボルソナロ氏の支持者の間でも意見がまとまっていない。2月28日〜2日付現地紙、サイトが報じている。
 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、ボルソナロ大統領はカーニバル休暇を取り、サンパウロ州海岸部グアルジャーで静養していたが、2月27日に記者団からウクライナ危機について訊かれ、「どちらか一方に着くつもりはない」とし、中立の姿勢をとるとともに、「両国の間での解決を求める」と語った。
 ブラジルは国際紛争に関しては「中立」の立場をとるのが伝統的だ。だが、今回の件に関しては、北大西洋条約機構(NATO)の協力国という立場から、外務省がその伝統を破ってウクライナ支持を行いたがっていた。
 この発言の際、大統領は「大量殺戮というのは言い過ぎ」と発言したため、駐ブラジル・ウクライナ大使のアナトリ・トゥカッチ氏が、「大統領は正しい情報を受け取っていないようだ」と批判した。ロシア軍によるウクライナ民間人殺害は353人に及ぶと公表されており、同大使は「もっと民間人殺害のデータや映像を公開するように職員に指示するつもりだ」と語った。
 トゥカッチ大使はボルソナロ大統領にウクライナのゼレンスキー大統領との対談を促したが、ボルソナロ氏は2月28日、「彼と話すことはない」と答えた。ボルソナロ氏は前日も、ゼレンスキー大統領に関して「一国の命運がコメディアンに託されている」と、政治経験のない俳優から大統領に選ばれたことを皮肉っていた。

 2月16日にロシアを訪問した際に「ロシアに連帯を示したい」と発言し、27日の会見でも「プーチン氏と電話で2時間話した(外務省は即否定、のちに本人も否定)」と語るなど、ボルソナロ大統領からはプーチン大統領寄りの発言が目立つ。
 他方、ボルソナロ氏はここまで明確なロシア支持発言も避けている。その背景には、同氏の支持者の間でもウクライナ危機に関して意見が割れていることが挙げられる。
 ボルソナロ氏が敬愛するトランプ前米国大統領や同国の極右大物のスティーヴ・バノン氏らはロシアを支持しており、それに従う人も少なくない。だが、一方で、ウクライナを支持する人も多い。
 それは「愛国心」という観点もあるが、ブラジルの極右主義者にはウクライナで台頭した極右勢力に影響を受けた勢力が実際に存在するためだ。今年は大統領選も控えており、ロシア支持を行って反発を受ければ、ボルソナロ氏には痛手となる。
 連邦政府内部でも、外務省やプーチン大統領のことを「ヒトラー」と呼んだモウロン副大統領のような存在がいる一方、ロシアとの通商関係が壊れる恐れからロシア支持を求める勢力が存在するなど、意見がまとまっていない。
 国連常任理事会と臨時総会でロシア非難と対話による解決を求める提案決議の際、ブラジルに国連大使はロシアの侵攻を厳しく批判した上で賛成票を投じている。だが、国家元首である大統領が中立を公言しているため、大使の投票が無効化される可能性があると分析する専門家もいる。

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