ロライマ州ボアビスタの日系コミュニティ=少数精鋭、尊敬される日系人6=日本政府やJICAと足並みそろえ

江田シロミル代表(ANIR本部の庭園スペースにて)
江田シロミル代表(ANIR本部の庭園スペースにて)

 2008年に創設されたANIR(ロライマ日伯協会)は、2012年にボアビスタ市から土地の寄付を受けた。同年、マナウスの日本総領事館に会館建設のための資金援助要望書を送り、2016年に承認されると、2017年に日本政府からの助成金を受け、本部会館を完成させた。
 2021年12月には国際協力機構(JICA)の助成金を受け、会館文化スペースの屋根改修と施設拡張、日本庭園の自動灌漑システムの設置が行われ、完工式典が催された。式典にはJICAブラジル事務所の江口雅之所長やアントニオ・デナリウム・ロライマ州知事ら地元の有力者が列席した。
 ANIRがロライマ州の日系コミュニティや同州の発展に貢献していると認めるのは日本政府だけではない。イラン・ゴンサルベス・ロライマ州議員は、江田家や土井家と親交があり、2019年の議会改正プロジェクトを通じて、会館設備に必要な機材、楽器、着物、家具の購入に対して13万1653・18レアルを寄付した。ブラジル億万長者の一人カルロス・ウィザルジ氏は土井家と親交があり、会館の台所設備のために1万レアルの寄付を行っている。
 ANIR本部には事務室、日本語教室、料理教室用の台所などが設置されたが、敷地の半分はまだ未使用だ。ANIRの江田シロミル代表は、「今後は空き地部分にサロンを設置して、日本とロライマの交流を促進できる社交場を作りたいと思っています」と意気込みを見せる。

ANIR創設からの歩み

 ANIRが創設された2008年には、ボアビスタで初めて日本文化週間が催され、約1万人がイベントに訪れるなど同地の日本文化への関心の高さが示された。
 ANIRが創設されてからコロナ禍に入るまで、JICAとの協定により、4人のボランティア日本語教師が派遣され、それぞれがボアビスタに2年間滞在し、現地教師の育成とANIRの活動強化に貢献してきた。コロナ禍が落ち着き次第、約2年停止してきた日本語教師ボランティアの派遣も再開される予定だ。
 ANIRが設立されたことにより、JICAの日系トレーニングプログラムによる、ロライマ日系人子弟が日本で研修を受ける間口も開かれた。
 ANIRは2009年からボアビスタ市内の公園で運動会を開催するようになった。勝敗を競うではなく余暇の充実を目的とし、ブラジルのこどもの日(10月12日)を祝って毎年10月に開催してきた。
 コロナ禍に入ってからはANIRもイベントが全面的に中止したが、オンラインと対面のハイブリッドで徐々に活動を再開させ、日本語授業、盆踊り、柔道、空手、剣術、和太鼓、七夕祭り、第7回日本文化祭などブラジル最北州でも活発に日本文化の普及に力を入れている。(取材・執筆/大浦智子、つづく)

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