《ブラジル》ボルソナロが開戦危機無視、ロシア訪問強行=肥料等確保の交渉が主目的か?=緊迫感高まるウクライナ情勢

ボルソナロ大統領とプーチン大統領(Twitter)

 ボルソナロ大統領は、昨年8月に決められていたロシア訪問を強行するべく、15日にブラジルを発つ予定だ。この訪問は、ロシアのウクライナ侵攻の恐れから米国に強く反対されていたが、先週に情勢がさらに緊迫化。ブラジルの国際的印象を損なう危険性も出てきている。14日付現地サイトが報じている。
 ロシアがウクライナ国境に10万人の派兵、それに対し米国と北大西洋条約機構(NATO)が3千人の軍を周辺国に派兵して牽制するなどの緊迫した情勢になっている。
 先週には複数の米国メディアが「プーチン大統領がロシア軍に侵攻を命じた」との報道があり、12日に米国のバイデン大統領とプーチン大統領が電話で会談。バイデン大統領が「侵攻を実行すると、手痛い経済制裁を受けることになる」と警告を行った。それに対し、プーチン大統領は一歩も引かない姿勢を見せている。
 ロシア軍はウクライナと国境を接するベラルーシで大規模軍事演習を継続しており、更に臨戦態勢の雰囲気を高めている。
 今回のロシア訪問はこうした緊迫感の中で行われる。ブラジル側は「これは昨年にロシア側から依頼があって行われるものだ」とし、「訪問を拒否しないということはロシアのウクライナ侵攻を容認するのと同義」だとの主張に対し、「あくまでブラジルとロシアの2国間の問題であり、ロシアの行動を是認するものではない」との反論を続けている。

 ボルソナロ大統領が今回強行する理由には、ロシアが「肥料」の重要原産国である点が挙げられる。ロシアの肥料輸出は、パンデミックにより製造が乱され、コモディティ価格全般が高騰したことで、ブラジルは多大な打撃を受けている最中だ。
 ブラジルはロシアとの貿易で、輸入の60%をリン酸肥料と窒素肥料が占めている。ブラジル政府は肥料市場への打撃を減らすために、流通量を確保する契約を行いたいという意向を持っている。ロシア側としても、ペトロブラスによる肥料工場の買収を求めている。
 これらの交渉はテレーザ・クリスチーナ農相が本来なら行うところだ。だが、同相がコロナウイルスに感染したため、ロシアに同行できなくなっている。
 ロシア側は軍用機の交渉も行いたい意向だという。同国は近距離対空防御システムのパーンツィリS1などの購入をブラジルに求めている。だがブラジル空軍のカルロス・アルメイダ・バチスタ総司令官は関心を示していないという。
 さらにボルソナロ大統領としては、ロシアの国営メディアが2016年のジウマ大統領罷免を「クーデター」と呼んだことも気にしていると言われている。労働者党(PT)政権時代にブラジルとロシアの関係は良好で、それがジウマ氏の罷免以降に弱まっていた。またプーチン氏がボルソナロ氏を「男らしい」と呼んで評価したことから関係を強化したがっている側面もあるとも報じられている。

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