《ブラジル》ボルソナロが豪雨被害中に休暇満喫=アルゼンチンの人道支援も批判=3日には腹痛で入院

休暇を満喫するボルソナロ氏(Twitter)

 年末の休暇を南部で過ごしたボルソナロ大統領(自由党・PL)は、休暇を切り上げて豪雨の被害に苦しむバイア州への視察に行かず、国民の批判を浴びた。また、大晦日のメッセージでワクチン・パスポートを批判するなど、物議を醸す行為も続けた。12月30〜1月1日付現地紙、サイトが報じている。
 ボルソナロ氏は12月27日からサンタカタリーナ州サンフランシスコ・ド・スルで休暇に入り、バイクでのツーリングやジェットスキー、ピザ屋での団らんを楽しんだ。
 最も注目されたのは12月30日、同地の観光名所で国内有数の遊園地の「ベト・カレーロ・ワールド」にミシェレ夫人と娘のラウラさん(11)を連れて現れた時だ。大統領が姿を現すと支持者らしき人たちが一斉に集まり、群れが出来たが、大統領や支持者たちの大半はマスク不着用だった。同州では開放空間でのマスク着用義務が解除されているが、その場合は社会的な距離の確保が必要だ。
 大統領はさらに、米国のミニカーメーカー「ホットウィール」のショーの後、ゴーカートに乗り込むと、窓から手を出し、左手の人差し指を意気揚々と掲げる姿を見せつけた。
 だが、この様子はマスコミからの一斉批判の対象となり、ネット上が大統領への批判で溢れた。それは大統領の休暇期間中、バイア州とミナス・ジェライス州などでの水害が深刻化していたためだ。
 特にバイア州では136市で非常事態宣言が出て、25人が死亡。47万人が避難所生活や親戚宅などに身を寄せることを強いられており、家を失った人も約7万7千人いる。こうした状況にも関わらず、大統領は休暇を切り上げて現地視察を行おうとはしなかった。

 他方、バイア州のルイ・コスタ知事(労働者党・PT)は12月30日、「諸外国からの援助を求めたい。連邦政府の承認はなくていい」との声明を発表。それに対し、アルゼンチン政府が人道支援を申し出た。
 だが、ボルソナロ大統領はこれを嫌い、ツイッター上で「豪雨には陸軍が対応している」としてアルゼンチンからの援助を嫌う発言を行った。夜も休暇先で行ったネット上の生放送で重ねて批判した。
 また、放送中に自身の電話の呼び出し音が鳴ると、「誰がこんなときに電話をかけてくるんだ」と怒る場面も見られた。電話の主はカルロス・アルベルト・フランサ外相だった。
 大統領からの批判後もアルゼンチンは支援の意向を強めており、コスタ知事もこれを受け入れる判断を行っている。
 さらに、翌12月31日午後8時30分には、全国のテレビとラジオで大統領による2021年最後の演説が放送された。これは休暇前に録画されたものだったが、放送開始と同時に全国の主要都市では一斉に、鍋叩きによる抗議行動(パネラッソ)が行われた。放送は、州知事たちが推進するコロナウイルスのワクチン・パスポートを批判する内容で、火に油を注いでいた。
 なお、大統領は2日に腹痛や嘔吐を起こし、3日未明にサンパウロ市内の病院に入院。腸閉塞で手術の可能性ありと診断された。退院の時期は未定だ。

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 家族との休暇を満喫し、その様子をSNSに上げ続け、豪雨の被災地に出向こうともしなかったことで物議を醸したボルソナロ大統領。特に問題となった12月30日の行動には、多くの国民が強い違和感を示している。動画や写真が出回ったゴーカートは「ホットウィール」という米国の世界的なミニカーのブランドで、ブラジルでも就学前の子供を中心に人気がある。また、大統領が遊んだ「ベト・カレーロ・ワールド」は、世界的に有名なテーマパークのないブラジルにとり、ディズニーランドやユニバーサル・スタジオのような存在。この行為の子供っぽさで国民の呆れにさらに拍車をかけていたか?

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